お役立ちコラム

遺言信託とは?

いつか必ずやってくる“その時”に備えてしたためておく遺言。この世に残す自分の財産をどうすればいいかは悩ましいところですが、せっかく作成した遺言書も、実現されなければ「絵に描いた餅」となってしまいます。また、遺言による場合を含め、相続手続は思った以上に難解で、相続人や受遺者に負担をかけることも。そこで有効なのが遺言信託。相続の専門家が難解な相続手続を代わって行い、遺言の内容を確実に実現します。

遺言信託とは

遺言信託とは、簡単に言うと「遺言書の作成をサポートしてもらい、そして完成した遺言書を保管してもらうとともに、相続手続(遺言執行手続)について、あらかじめ専門家に委託(委任)しておく」というサービスです。なお、後ほど解説しますが、遺言信託という用語は、遺言で信託(民事信託等)を設定する、という全く別の意味で使われる場合もあります。
一般的な遺言信託では、受託者となる専門家が遺言書の作成に携わることから、ご本人の要望に沿った内容で法律的にも有効な遺言書が作成できるので、来るべき“その時”に備えることができます。
次に、備えておきたいのが相続手続のこと。人は死亡すると、法律的にはその瞬間から相続が開始されますが、言うまでもなく、ご自身の相続手続を自分で処理することはできません。そこで、あらかじめ遺言書に、この遺言を実現する者として「遺言執行者」を指定しておき、同時に、遺言執行者に指定した者と相続手続を委託する契約を締結しておきます。
なぜ、「遺言書で指定したのに別な契約が必要なの?」と疑問に思うかもしれませんが、遺言書では、相手の承諾なしに、ある意味一方的に遺言執行者を指定することができますが、その分、いざその段になって断られてしまうリスクがありますし、また、遺言書では定めきれない詳細な事項を取り決めておくことで、ご自身が旅立たれた後も安心して相続手続を委ねることができるのです。
そして、いよいよ“その時”が来たとき、遺言執行者に指定した専門家が、ご自宅や自動車の名義変更手続、銀行預金の解約・払い出し、公共料金の処理、ご葬儀や入院費の支払いなど、いざとなると手続方法が分からず、思っている以上に手間のかかる相続手続を、相続人や受遺者に代わって手続してくれます。もちろん、遺言書の通りに遺産の分配まで行ってくれるので、残された親族の皆様にご負担をかけることもないことから、遺言者であるご自身の意思を確実に実現する手段として、遺言信託は万全の備えと言えるでしょう。
最後に、似て非なるものとして、近年注目されている「民事信託」や「家族信託(一般社団法人家族信託普及協会)」と呼ばれるものがありますが、こちらは、「信託法」という法律に基づいて行う「財産管理の一手法」で、遺言的な機能を果たす場合があるものの、遺言信託とは全く別の制度ですのでご注意ください。

遺言信託の活用事例

80歳のA様の場合、同い年の配偶者(妻)と2人のご子息がおりましたが、昨年、次男(配偶者あり、子供はなし)に先立たれました。お持ちの財産は、3000万円相当のご自宅(土地・建物)と預金が約2000万円です。A様としては、①先祖代々の土地・建物は家業を継いでいる長男に譲りたいが、妻が元気なうちはこのまま住まわせたい、②妻の今後を考えると相応の資金も残してやりたい、③先立った次男の配偶者にもいくらか譲りたい、という思いがありました。また、現時点では、家族関係は良好でも、遺産のことで関係が悪化することも稀ではないことから、A様としては、きちんと遺言を残したいとお考えでした。
このケースでは、専門家のアドバイスで、⑴妻には、終身無償でご自宅に住むことができる配偶者居住権の設定と、老後の資金として1500万円を、⑵長男には、配偶者居住権の負担のある自宅土地・建物と250万円、⑶他界した次男の配偶者にも250万円遺贈する旨の遺言書を、公正証書で作成しました。
この遺言書のポイントは、まず、㋐遺留分(一定の相続人に法律上保証された最低限の取り分)の侵害はない点、㋑令和2年4月より新たに導入された配偶者居住権を遺言書上で設定することにより、万が一、家業が傾いて長男名義となった土地・建物が差し押さえられたり、家族関係が不仲になったとしても妻は安心して住み続けられ、かつ、老後の資金も確保されている点、㋒本来、相続人ではない次男の配偶者にも財産を譲れる点ですが、特に、㋑は、新たに導入された制度で登記が必要となるなど、手続が複雑で、高齢の妻や仕事で忙しい長男には、かなりの負担となりそうです。
そこで、この遺言書で専門家を遺言執行者に指定しておき、併せて遺言信託契約を結んでおくことで、複雑な手続は全て遺言執行者が処理してくれますし、相続人ではない次男の配偶者にも遺言通りに財産を渡すことができるなど、残された家族の手を煩わせることなく確実に遺言を実現することができるのです。

遺言信託のメリット

通常、遺言信託は、遺言書の作成とセットとなるので、遺言書作成時に、相続の専門家のアドバイスを受けることができるメリットがあります。遺言には、法律で厳格なルールが定められており、このルールが守られていない遺言書は無効となってしまうことが!また、遺言書としては有効でも、いわゆる遺留分を侵害する内容であったりすると、後々トラブルを生じる恐れがありますし、多くの慈善団体は現金のみの遺贈を受け付けているため、自宅不動産を遺贈する旨の遺言では受け取りを辞退されてしまうことがあるなど、実は、遺言の作成は結構難しいのです。このため、遺言作成時に専門家のアドバイスが受けられるメリットは、たいへん大きいと言えましょう。
加えて、遺言信託では、遺言書を公正証書で作成するのが基本なので、紛失や改ざん、隠ぺいなどという心配も無用ですし、自筆証書遺言の場合に必要な裁判所による検認手続が不要となります。
そして、遺言信託のもう一つのメリットは、煩雑な相続手続を代わりに処理してくれる点です。相続手続で必ず必要となるのが、被相続人や相続人の戸籍謄本などの公的証明書。場合によっては、被相続人の両親などの戸籍を、出生から全てつながる形で集めなければなりませんが、枚数もさることながら、明治時代の戸籍は、字が達筆すぎたり旧体字で書かれていて、判読するだけでも一苦労。おまけに、市町村合併で消滅した自治体の戸籍はどこに請求すればいい?というケースも!
なんとか公的証明書が集められても、今度は、預金の名義変更や解約払い戻し、不動産や自動車の名義変更など諸々の手続が待っています。これらは、生涯で何度も行う手続ではないにもかかわらず大変面倒。でも、遺言信託契約を締結しておけば、こうした煩わしい手続は、委託を受けた遺言執行者が処理してくれます(一部代理手続できないものを除く)。特に、相続人や受遺者が高齢であったり、海外在住の場合は、有意義なサービスと言えるでしょう。
また、相続人以外への遺贈をご希望であったり、そもそも相続人が誰もいない方は、遺言信託契約によって遺言通り確実に遺贈できます。前述のように、慈善団体への遺贈をご希望の場合も、遺言書で、財産の全てを換価換金しそのお金を遺贈(これを清算型遺言と言います)と記載しておけば、遺言執行者が現金化するので、不動産等についても遺贈が可能です。
相続税の申告が必要なケースや、遺言書をめぐってトラブルが生じた場合は、弁護士、税理士などの専門家の紹介が受けられるので、相続人及び受遺者の皆様にも安心いただけます。

遺言信託のデメリット

遺言信託のデメリットとしては、対価としての費用(報酬・手数料等)が発生する点があげられます。主な費用としては、①基本手数料(遺言書作成にあたっての報酬)、②遺言公正証書の作成手数料、そして、③被相続人が他界した後に行う相続手続(遺言執行)報酬の3点。
①と③については、遺言信託契約に基づき受託者に支払う費用で、受託者により異なりますが、①は10万円~30万円(消費税別途)程度、③は遺言執行時の財産額の1%前後で、かつ、最低報酬額を50万円~100万円(消費税別途)と設定している受託者が多いようです。ちなみに、遺言信託契約の受託者は、金融機関(銀行、信託銀行)、弁護士、税理士、行政書士、司法書士などの士業者、そして、士業者とタッグを組み相続手続全般をサポートする事業者などがサービスを提供しています。
②については、公証人へ支払う作成費で、遺言作成時の財産額に比例した手数料となっており、財産額が多く、かつ、配分する相続人・受遺者が多いほど費用がかさみます。3000万円をお一人に相続させる旨の遺言で約4万円程度、2000万円と1000万円をそれぞれ相続させる旨の遺言で約5.5万円程度が目安となります。その他、寝たきりの方などのため、自宅や病院等へ公証人が出張訪問して遺言書を作成することもできますが、その分費用や交通費が加算されます。
次に、遺言信託についてのデメリットではありませんが、相続手続で遺言執行者を立てた場合(裁判所の審判による場合を含む)、遺言執行者は法律(民法)上、全相続人へ遺言の内容を通知する義務と財産目録を交付する義務を負います。裏を返せば、遺言と財産の内容が全相続人に知れる、ということになるため、他の相続人には知られたくない、という方にとってはデメリットかもしれません。ただ、相続人には利害関係がありますし、中には遺留分権利者がいる場合もあるので、たとえ遺言執行者を立てない場合でも、相続の発生を知らせないというのは、無用なトラブルを生じさせるおそれがあることから、きちんと知らせるべきでしょう。相続人への通知などは、全て遺言信託契約を受託した遺言執行者が行いますので、相続人や受遺者の方々の手を煩わせることはありません。

全体のまとめ

以前は、戦前の家督相続の影響もあり、「財産はすべて長男が相続する」ということで異論は出ないから遺言など必要ない、というケースが多かったかもしれません。しかし、相続に関する法律が度々改正され、公平・平等の考え方が浸透してきた現代、加えて、自分の遺産は自由に分配したい、というニーズも広がりつつあるので、今後、遺言書を作成する方はますます増加することでしょう。また、高齢化により相続手続が進められないお年寄りや、少子化で相続人が不在という案件が増えています。遺言信託は、こうした時代にフィットするサービスなのです。

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