お役立ちコラム

任意後見制度に関して
~利用法や費用など気になる部分を分かりやすく解説します!

年齢を重ねると、身体の衰えや不調から福祉サービスの利用や病院への入院が必要になることがあります。また、お一人で暮らすことが難しくなり、福祉施設へ転居したりその資金をねん出するためにご自宅を売却したりすることが必要となることもあります。
そのような状況では、契約を結んだり様々な書類の手続きに対応したりすることを求められますが、認知症になり判断能力が衰えていた場合にはそれらの対応が難しくなります。また、その際には、必要な支払いへの対応や自分の財産を把握して適切に管理することもできなくなっている場合が少なくありません。
そのような場合にご本人を保護・支援するために活用されるのが成年後見制度です。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、精神上の障がい(認知症、知的障がい、精神障がい等)により判断能力が十分でない方を保護・支援する制度です。その保護・支援する人を「後見人」と言います。後見人の仕事は、ご本人に代わって財産を管理したり、生活する上で必要な介護・医療等のサービスを受けるための契約・手続きを行ったりすることです。ご本人を介護したり看護したりすることは仕事に含まれません。
成年後見制度には、判断能力が不十分になってから家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見」と、判断能力が不十分になる前に将来の後見人の候補者を自分で選んでおく「任意後見」の2種類があります。ご本人の意思を尊重する観点から、任意後見は法定後見に優先するとされており、任意後見契約が先に締結されていれば、原則として法定後見を利用することはできません。
当センターでは、以下の理由から法定後見よりも任意後見のほうが望ましい制度と考え、お勧めしています。

①ご本人が後見人を選べる(後見人を代えることもできる)という自由度がある。
②ご本人の判断能力が不十分になる前から関わることによって、ご本人のお考えや人生観等を事前に聞いておくことができ、よりご本人の意思に沿った支援ができる。

任意後見契約とは

任意後見契約とは、ご本人に判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ人や法人(将来の任意後見人)に、財産の管理や生活に必要な契約・手続き等を行うための代理権を与える契約です。将来任意後見人になることを引き受けた人や法人のことを任意後見受任者と言います。
実際にご本人の判断能力が不十分になったときは、親族や任意後見受任者等が、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任の申立てを行います。それを受けて任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見受任者は正式に任意後見人となり、支援が開始します。任意後見監督人は、任意後見人が契約内容にそって適正に仕事をしているか監督し、誤りや不正があれば指導したり家庭裁判所に報告したりします。 なお、任意後見契約には以下の3つの類型があると言われています。

1.将来型

将来判断能力が不十分になったときに任意後見が開始される、典型的な契約形態です。

2.移行型

任意後見契約とあわせて後述する任意代理契約(財産管理委任契約)を結んでおくことで、判断能力のあるうちから財産管理等の支援を開始することができ、判断能力が不十分になってからは任意後見に移行させることで、円滑に支援が継続できる契約形態です。

3.即効型

すでに判断能力の低下がみられる場合に、契約締結後即時に任意後見監督人選任の申立てを行い、任意後見を開始する契約形態です。

任意後見と法定後見の違い

任意後見と法定後見には以下のような違いがあります。

1.手続き

任意後見は、ご本人の判断能力が不十分になる前に将来の後見人の候補者(任意後見受任者)との間で契約を結ばなければなりませんので、判断能力のある人でなければ利用できません。ご本人の判断能力が不十分になってからは、親族や任意後見受任者等による申立てを受け、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後、ご本人が選んだ任意後見受任者が任意後見人となります。
これに対して、法定後見では、ご本人の判断能力が不十分になってから、親族等による申立てを受け、家庭裁判所が後見人を選任します。つまり、すでに判断能力が不十分になっている人を対象にした制度となっています。また、後見人は、家庭裁判所が選ぶため、ご本人や親族等が選ぶことはできません(後見人の候補者を立てることはできますが、決定権は家庭裁判所にあるため、候補者が後見人に選ばれるとは限りません)。

2.後見人の権限

任意後見では、任意後見人は代理権を持つことはできますが、同意権・取消権を持つことはできません。なお、代理権の範囲は、任意後見契約によって定められます。
これに対して、法定後見では、ご本人の判断能力の程度に応じて3つの類型(後見・保佐・補助)に分かれており、それぞれの類型において後見人等の権限は、法律で以下のとおり定められています。

①後見:ご本人の判断能力が日常的に欠けている場合。支援する後見人には、財産に関する法律行為全般についての代理権と日常生活に関する行為以外の行為についての取消権があります。
②保佐:ご本人の判断能力が著しく不十分の場合。支援する保佐人には、財産上の重要な行為についての同意権と取消権があります。代理権は、家庭裁判所が認めた行為についてのみ与えられます。
③補助:ご本人の判断能力が不十分の場合。支援する補助人には、家庭裁判所が認めた行為についてのみ代理権、同意権、取消権が与えられます。

任意代理契約(財産管理委任契約)とは

任意代理契約(財産管理委任契約)とは、財産の管理や生活上の事務等について、ご本人が任意に選んだ人や法人に代理権を与える(委任する)契約です。任意後見契約の受任者は、ご本人の判断能力が不十分にならなければ財産管理等の支援を開始できないのに対して、任意代理契約(財産管理委任契約)の受任者は、ご本人の意思に基づいて委任された事務を行うため、判断能力が不十分になる前から支援を開始できるというメリットがあります。そのため、判断能力はあるものの、お身体の状態に不安がある方や煩雑な財産管理を専門家に託したい方などに利用されています。
この契約は、任意後見契約とは別種の契約であるため、単独で利用することもできる一方で、支援内容が任意後見契約と似ていることから、任意後見契約と一緒に契約しておくと、判断能力の低下状況にあわせて、委任による支援から任意後見による支援へスムーズに移行することができます。このような契約を移行型任意後見契約と言います(<任意後見契約とは>2.参照)。判断能力が低下していない状況でも財産管理を託したい方や事故・病気等不測の事態への備えを万全のものにしておきたいという方には、移行型任意後見契約の活用をお勧めします。

任意後見人になれる人

任意後見人になるために資格は必要ありません。家庭裁判所が認めれば、弁護士等の特別な資格を持っている人はもちろん、親族、親族ではない第三者や法人も任意後見人になることができます。
ただし、以下の項目に該当する人や法人は任意後見人にはなれません。

①未成年者:一般的に、社会経験不足により財産管理を行うことができないと予想されるためです。
②後見人を解任された経験がある者:家庭裁判所から後見人として不適切であると認定される行為をした者であるからです。
③破産者:自分の財産管理に失敗した破産者が、他人の財産管理等を行うことは適切ではないと考えられるからです。
④行方不明者:任意後見人は他人の財産管理等を行う重大な責任を負っており、責任の所在を明確にするために、連絡のとれない者は任意後見人になれないとされています。
⑤ご本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族:対立関係にある以上、ご本人の支援をする者としては不適切と考えられます。
⑥不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者:不誠実な者や不正を行うような好ましくない者が責任重大な任意後見人になるのは相応しくないと考えられます。

任意後見制度の利用方法

任意後見制度の利用方法を、当センターでの手続きの流れに沿って案内します。

  • STEP1

    ・任意後見人の候補者を選ぶ(面談の申し込み)

    将来の任意後見人を引き受けてくれる相手(任意後見受任者)を選びます。一般的には、子どもや甥・姪等の親族、友人・知人、弁護士・司法書士等の有資格者が引き受ける場合が多いようですが、法人が引き受けることも可能です。法人が任意後見人になるメリットとしては、将来加齢・死亡等で事務が行えなくなるリスクを回避できること、複数の職員が連携して事務を行うことで不正防止かつ質の高いサービス提供を実現できることなどが挙げられます。いずれにしても、自分の判断能力が低下した後の財産管理等を委ねることになりますので、権限を悪用されることのない信頼できる人や法人を選ぶ必要があります。
    当センターでは、まず面談のお申し込みをいただくところから始まります。サービスのご説明をお聞きいただき、ご利用を希望されるようでしたら申込書をご提出いただきます。

  • STEP2

    ・任意後見契約の内容を決める(面談)

    任意後見人に付与する代理権の内容や報酬の金額等を決めます。任意後見人に行ってもらう財産管理と身上保護(生活環境を整えるための契約・諸手続き)に関する事項について、広く包括的に代理権を定めるのか、個別具体的に代理権を定めるのか、大きく分けて2通りの方向性が考えられますが、一般的には、不測の事態にも対応できるようにしておくために包括的な代理権を定めていることが多いようです。また、報酬については、親族が任意後見人を引き受ける場合には無償の場合が多く、有資格者や法人等が任意後見人を引き受ける場合には通常、有償となります。任意後見人の報酬額は協議して決めることになりますが、一般的な相場としては月額3万円~6万円と言われています。ただし、これは任意後見が開始してから発生するものであり、契約を結んだだけでは発生しません。
    当センターでは、面談を通じて、任意後見についてご理解を深めていただくとともに契約内容の調整を進めていき、当センターと契約することに十分ご納得いただいた後、契約書を取り交わすことになります。

  • STEP3

    ・任意後見契約を結ぶ(公証役場での契約)

    契約の内容について合意ができたら実際に契約を結びます。任意後見契約は、必ず公正証書で締結しなければならないと法律で定められています(任意後見契約に関する法律第3条)。ご本人の判断能力が不十分になった後の財産管理等を委任する重要な契約ですので、ご本人の真意に基づく契約となっているかを公正な第三者(公証人)に確認してもらうことが必須とされているのです。そのため、契約締結は一般的に公証役場で行われますが、公証役場へ赴くことが難しい場合は、公証人に出張してもらうこともできます。なお、契約が結ばれた後は、公証人の嘱託により、任意後見契約が結ばれたことの登記がなされます。
    当センターでは、契約書を取り交わすにあたって、公証人との事前の連絡調整は、すべて当センターにおいて対応し、契約締結までの段取りをサポートします。なお、初回の面談から契約までは通常1~2か月程度かかります。

  • STEP4

    ・委任事務の開始(事務開始の申し出)

    契約が締結されればひとまず備えは完了です。任意代理契約(財産管理委任契約)や移行型任意後見契約を結んだ場合、任意代理契約(財産管理委任契約)に基づく委任事務の開始時期は、ご本人が指定することになります。これは、契約直後から開始しても構いませんし、必要が生じなければ生涯開始しない(全く利用しない)ことも可能です。
    当センターでは、任意代理契約(財産管理委任契約)に基づく委任事務の開始にあたっては、ご本人から申出書のご提出(難しければ口頭での申し出)をいただいています。その後財産管理等に関する支援が開始し、契約で定めた毎月の報酬が発生することになります。

  • STEP5

    ・任意後見の開始(任意後見監督人選任の申立て)

    ご本人の判断能力が不十分な状況になったら任意後見を開始することになりますが、そのためには家庭裁判所に対し、任意後見監督人選任の申立てを行わなければなりません。その際には、原則としてご本人の同意が必要とされています。ご本人の同意を得て親族や任意後見受任者等が申立てを行う又はご本人自身が申立てを行うことで、家庭裁判所において任意後見監督人が選任されます。それによって任意後見契約が効力を生じ、任意後見が開始されることになります。なお、任意後見が開始すると、任意後見人との間で定めた毎月の報酬が発生するのに加え、任意後見監督人の報酬も発生します。
    当センターでは、任意後見契約を締結した方に対し、定期的に健康状態等の確認を行い、判断能力の衰えが顕著にみられる場合は、ご本人や親族・福祉関係者等と相談の上、事情・状況に応じて任意後見監督人選任の申立てを行うようにしています。

  • STEP6

    ・任意後見契約の終了

    ご本人や任意後見人(任意後見受任者)が亡くなると任意後見契約は終了します。法人が任意後見人(任意後見受任者)の場合、亡くなることはあり得ませんが、法人が破産したり解散したりすると任意後見契約は終了することになります。
    注意が必要なのは契約を解除したい場合です。相手への信頼がなくなった等の理由で契約を解除する場合、任意後見監督人選任前であれば、つまり任意後見が開始していなければ、公証人の認証を受けることで契約はいつでも解除することができます。しかしながら、任意後見監督人選任後の場合、つまり任意後見がすでに開始している場合は、すでに判断能力が不十分になっているご本人の保護を図る必要があることから、正当な理由があり、かつ家庭裁判所の許可を得なければ契約を解除することができませんのでご注意ください。

全体のまとめ

認知症は今や誰がなってもおかしくない身近な病気となりました。団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるとも予測されています。認知症になったときにあなたの大事な財産や生活を守ってくれる人を思い浮かべてみてください。もし簡単に思い浮かばないようであれば、任意後見制度の活用を考えてみてもよいかもしれません。
任意後見は、契約を結んだからといって必ず使わなければならないものではありません。生涯認知症になることなく、したがって後見人になってもらうこともなく、お亡くなりになって契約が終了する場合もあります。そのような場合でも、契約を結んだことは無駄となるわけではありません。先々の不安に対処しておくことは、今の生活をより前向きに過ごすための後押しをしてくれるという大きな意味を持っています。
将来に備える保険とも言える任意後見制度。誰もが必要とするサポートではないかもしれませんが、認知症になったときに頼れる人がいない、あるいは親族に負担をかけたくないという方はぜひ一度検討してみてください。

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